労働案件は裁判例と実務とのギャップがありすぎるのが問題だ・・・
タイトルはここ数日はてなブログのトップに載っているこのブログを読んで思ったことです。
この会社は本当にひどい。特定社労士の試験のゼミ討論の設例になりそうなぐらい。
営業手当という名の内訳不透明な残業代についてはよくある話で、裁判例も増えてきて訴えられたらヤバイよっていうのはそろそろ実務書でも言われ始めておりプロ意識のある人事総務関係職の方々は認識し始めている頃かと思いますが、まだまだ全ての会社に浸透する日は遠い。
なので、それによる残業代未払いについては、残念ながらまあよくある意識低い系の会社(営業手当が出てるだけまだマシという側面もある・もちろん違法だから改善すべきですが)なんだろうと思うのですが、
最悪なのは従業員が全て匿名でブログに書き、労基に駆け込んだことで刑事告訴をちらつかせて退職届の記入を強要したこと・・・・
そりゃ、会社名出してブログ書いたら訴えられる可能性もあるだろうけど、ブログでは一切社名出していないし、
労基に相談することは労働者の権利だからそれによる解雇や不利益取扱は労働基準法で禁じられているしね。。。
労働基準法抜粋
第百四条 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
○2 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。
労働基準法を自分たちの都合の良いように捻じ曲げて解釈するのは(よくないけど)ありがちとして、
さすがに労働基準法に思いっきり「労働者は~申告することができる」と書いてあるのに刑事告訴ちらつかせるのはダメでしょ・・・ここの会社ちゃんとした法務とか人事いるのかな・・・
解雇してはいけないことは知っているからこそ退職届の記入を強要したんでしょうけどね。
で、この方は労基で解雇認定してもらうように要請して無理だといわれたとのことなんですが、これは仕方が無いことで・・・
もちろん、裁判にしたら労働者が勝つだろうと思われる案件だし、
類似の裁判例も多くありますが、
労働基準監督署は残念ながら事実認定を行う場ではないから、いくら類似の裁判例があっても形式が整ってないとなんともできないんですよね。。。
それが本当に問題です。。。
事業主は、裁判でどんなに争われていて労働者が勝ちまくっている案件であっても、実際に自分たちが訴えられない限りは動かない(むしろ雇ってやっているのに訴えるとは何事かとすら思っている)ケースが多いです。
裁判例ってあくまでもその裁判の当事者同士についてのみ効力のあることだから、似たような例でも強制性をもたせるためには裁判起こさないとだめなんですよね。
でも裁判ってかなりハードル高いからだいたいの人が泣き寝入りになっちゃう・・・
それをいいことにやりたい放題の一部の事業主たち・・・
これは絶対国が何とかしないといけないと思う。
労働契約法ができた時のように裁判例を法律化していったり、もしくは最高裁判例になってる案件と酷似した案件で敗訴した事業主にはペナルティを課すとか・・・
人手不足の今、ブラック会社には就職しない・してしまっても気づいたら即辞める事を皆が心がければちょっとは変わるかなーと思いますが、そんなの言うのは簡単だけどなかなかできないですよね・・未経験の人とか、憧れの業界とか事情は色々ある。
ブラック企業は撲滅すべきだけど、そこで我慢して働く人たちにこれ以上の不利益があってはいけない。
労働問題は本当に難しいと思います・・・・
戦える人はどんどん戦う、そしてお役所は匿名であってもチクリがあったらどんどん動く、その積み重ねしかないのかな・・・
戦うために必要なのはやっぱり知識。
正しい知識を広めていくため、微力ながら情報発信に努めていきたいと改めて思いました。