タックス・ヘイブン税制の申告書を書くにあたって読んだ参考書の個人的感想

コロナウイルスが一日でも早く収束することを祈っています。

 

確定申告期限が伸びたのは素晴らしいご判断と思いつつ、3月決算法人の作業と被る部分があるので前倒しで法人申告書のシミュレーションをやったりしています。

 

そこで悩んでるのがタックス・ヘイブン税制(外国子会社合算税制・CFC税制)の申告書について。

タックスヘイブン税制は町の税理士である自分には関係ないと思ってあまり深く考えたことはなかったのですが、平成29年改正とトランプ税制によるアメリカの減税でいきなり身近なものになってしまった・・・・

 

この税制の対象になるかどうかの判定については、国税庁もQ&Aを出してくださっているし、

www.nta.go.jp

 

いろんな税務専門誌にも記事が載っていたので何となく理解できたのですが、肝心の申告書の書き方がよくわからない・・・

申告書の書き方の本とか見てみてもタックスヘイブン税制についての記載はちょっぴり・・・国税庁HPの様式の裏面の記載要項見ても肝心なところが書いてなかったりするし・・・

その上、海外の申告書の読み方がわからねえええええ・・英語を頑張って読んでもいまいちピンとこないところがある・・・

 

というわけで、参考書を読み漁ってみたので個人的な感想を書きます。

 

*海外子会社の課税対象所得について一番よくわかった本

29年度税制改正後のタックス・ヘイブン対策税制
 

 

これはQ&A方式になっていてすごくわかりやすかった。

特に、課税所得に合算すべき外国子会社の課税対象所得を算出するために調整すべき項目についてとても具体的に書いてあり非常に助かりました。

特に、控除すべき法人所得税の額について具体的に書いてあったのが良かった。

 

 

*申告書の書き方のイメージがつかめた本

タックス・ヘイブン税制の実務と申告 平成31年版

タックス・ヘイブン税制の実務と申告 平成31年版

 

 

これは「図解 国際税務」の作者の先生が書かれているだけあって、図が多くてわかりやすかった。設例をもとに申告書の書き方も例示されていたので、書き方についてはこれを読んだら大体わかったので非常にありがたい。

巻末に条文がついているのでわからないときに条文に当たるのが楽だったのもよかった。

ただ惜しむらくは、設例が設立したての外国子会社だったので、課税対象所得を計算する際に控除すべき法人所得税についてはスルーだったところ。。ここがあれば完璧なのになーと個人的に思いました。十分わかりやすい本なので贅沢言っちゃいけないですが・・

 

ちなみに正誤表が出てます

www.zaikyo.or.jp

 

*アメリカの申告書の読み方について参考になった本

 

これは外国税額控除の勉強のために買ったのですが、巻末にアメリカ・イギリス・オランダ・ドイツ・フランスなど、計22か国の税制概要と申告書等のサンプルが載っています。(2015年発行なので少し古い部分もあります)

なぜかアメリカの申告書のサンプルだけ、何を計算するための別表なのかという説明がついていてめちゃくちゃありがたかった・・・!

アメリカの申告書で、日本の別表4にあたるのはどこか、というのもこれでわかってすごくハードルが下がった。

*もちろん外国税額控除についてもとてもわかりやすいです。

 

これら三冊のおかげで大体理解できました!これで書けそう。現地の申告書作成者の方に確認すべきことはありますが・・・

 

また、これらの本を読む前、週刊税務通信のバックナンバーで過去の記事を読んで基本的にタックスヘイブン税制とは何をするものかということを学びました。昔の記事でも基本的な考え方は同じなので、税務通信データベース、もしくは他の税務専門誌でも過去の記事を見られる環境にある方は、「タックスヘイブン税制」で検索して昔の特集を読んでみられると良いと思います!

 

FASS検定の対策本ではTACの問題集が最高だけど改訂されてないから勝手に税務だけ法改正部分を指摘してみた

 

www.nekomage.world

 

この記事の続きです。

 

FASSでAをとるにあたってはTACの問題集をやることは大事だと思ったのですが、ただTACの問題集は最終改訂が2014年で古くて、その後の改正点が反映されていないのがネックです。

これ↓

FASS スピード問題集 第2版

FASS スピード問題集 第2版

  • 作者:TAC FASS研究会
  • 出版社/メーカー: TAC出版
  • 発売日: 2014/06/17
  • メディア: 単行本
 

 

でも、やっぱりAを絶対取らないといけないような人はTACの問題集はやったほうが良いです。公式だけだとAまで行くのは難しいと思う。

 

というわけで、勝手ながら税務の部分だけ改正点を指摘してみました。

著作権に配慮し、問題文や解答の引用は一切せず、ページ数と概要のみの表記となることを先にお断りしておきます。

 

1)税効果計算業務の問題5(P.73)繰越欠損金の繰越年数

問題文では、「翌期以降9年」とあるが、改正により現在は「平成30年4月1日以降開始事業年度分は10年」となっている。

 

2)税効果計算業務の問題7(P.74)繰延税金資産・負債のBS上の表示について

 問題文では、流動・固定の分類をするとあるが、改正により現在はすべて固定(繰延税金資産は投資その他の資産、繰延税金負債は固定負債)となっている。

 

3)税務調査対応の問題4(P.85)

 不服申し立ての可能な期間についての問題だが、現在は改正により大きく変わっている。

現在は、「異議申し立て」というのはなく、以下の3つの方法がある。

・再調査請求→処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内(これを飛ばして審査請求に行ってもよい)

・審査請求→再調査請求の決定があった日の翌日から1か月以内、もしくは再調査請求をしない場合は、処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内

・裁判所に訴訟の提起→審査請求の裁決があったことを知った日の翌日から6か月以内

 

4)消費税申告実務の問題8の解答(P.92)

 簡易課税の事業とみなし仕入れ率の関係には改正があった。(問題文の範囲では変更なし)

現在の区分は以下の通り。

第一種事業:90%(卸売業)

第二種事業:80%(小売業)

第三種事業:70%(農業、林業、漁業、鉱業、建設業、製造業、ガス・電気業など)

第四種事業:60%(飲食業など、上下のいずれにも当てはまらない場合)

第五種事業:50%(運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食以外)

第六種事業:40%(不動産業)

 

5)消費税申告実務の問題10の解答(P.92)

 消費税は申告期限の延長は認められていないという記載になっているが、2020年度税制改正により認められるようになる予定(2021年3月31日以後に終了する事業年度)。

問題文には変更なし。

 

 以上です。

 

私が一回やって気づいた部分のみ書いたので他にもあるかもしれませんが、その場合はご容赦ください!

 

TAC様におかれましては貴社の出版物のすばらしさを今一度自覚していただき、できれば第3版を発行していただきたいと切に願いますが・・・マイナーな試験だしないかなあ・・・

経理・財務スキル検定FASSを受けてきた

経理・財務スキル検定「FASS」を受験してきました。

 

この試験は2005年に開始した当初に当時の上司に勧められ、試しに受けてみてBだった記憶があるのですが、最近、企業によってはすごく重視しているところもあると聞き、今後企業に入りたくなったときに武器になるかなーと思い受けてみました。

 

Aいけた!さすがにあれから15年たってるもんな・・・

f:id:nekomage:20200131194848j:plain

 

私のスペックは、税理士で、経理会計税務経験はトータル20年以上、一般企業で連結会計と有価証券報告書作成の補助や連結子会社のパッケージ作成の経験あり。

という感じです。まあたぶんベテランの部類に入ると思う。

 

 

勉強方法は、公式問題集とTACの問題集だけやりました。

あとは、今まで受験した人に出た問題を教えてもらったりもしましたが、これがけっこう私の時もそのまま出て、遅く受けたもの勝ちの試験だなと思いました・・・

 

問題集については公式は一通り解いて、資金の部分は覚えてるかどうかが重要な問題が多いな‥と思ったので直前にまとめてやりました。

TACの問題集は前日に一夜漬けでやって、そこで間違ったところの単語帳を作って移動の時に見たりしましたが、

結果的にTACの問題集がめちゃくちゃよかった!!

 

FASS スピード問題集 第2版

FASS スピード問題集 第2版

  • 作者:TAC FASS研究会
  • 出版社/メーカー: TAC出版
  • 発売日: 2014/06/17
  • メディア: 単行本
 

 

この問題集は公式に比べて難しくて、しかも問題文が私には違和感のあるものが多かったです。

例えばある業務にA,B,Cというプロセスがあったとして、「Aに関するリスクコントロールのうち適切なものを選べ」というような、プロセスごとの業務について問われる問題が多数あって、あまりプロセスごとのリスクとか管理とかを分けて考えたことのなかった私にとっては非常に解きづらい問題でありました。

それで、なんだこの問題集、良くないんじゃないの・・と思っていたのですが、実際の試験ではそういう問題が結構出ました。。。。だからTACの問題集で慣れててよかった。

あとは、けっこうそのままの問題もあり前日にやっててよかったです。

 

惜しむらくは最終改訂が2014年なので改正で変わっているところがあるのに正誤を出していないところなんだよな・・・増刷はしてて、2019年に第4刷がでていますが当然改訂はしてないので中身は2014年に出たものと一緒です。

 

僭越ながら税務のところだけ改正点を指摘した記事を書きました↓

 

www.nekomage.world

 

また、プロセスごとの考え方はもしかしたら「基本テキスト」ってやつに載ってるのかもしれませんが、その本は私は2005年に一回買ってフローチャート見てわけわかんなくなった記憶があるので今回は一切開きませんでした。

 

会社「経理・財務」の基本テキスト (五訂版)

会社「経理・財務」の基本テキスト (五訂版)

 

 

会社「経理・財務」の基本テキスト2 ステップアップ編 (五訂版)

会社「経理・財務」の基本テキスト2 ステップアップ編 (五訂版)

 

 

でも、私がフローチャートになじめなかったのは中途半端に経験があったからだと思うので、未経験の分野がある人は買って読んだほうが良いのかもしれません。 

 

あと公式の問題集は最新のやつはアマゾンには売っていないので公式サイトから買いました。後リアル本屋の大きいところにはあるらしい。

 

公式サイトの販売コーナー↓

www.cfo.jp

*2019年度の受験期間は終わっており、2020年版が多分5月に出るので今は買わないほうが良いと思います。

 

結構面白い試験でした。

グーグルアドセンスをあきらめた

年が明けてから、当ブログは過去記事を見えなくしてみたり広告を消してみたり色々試行錯誤しておりました・・・

 

故あってこのブログの運営主体を変更したので、グーグルアドセンスを一回解約し、再度申請しなおしていたのですが・・・

 

まあ通らない通らない!

 

まず、

「サイトが停止しています」

と出る。

これは調べてみたところ、はてなブログとの相性の問題で、チャレンジを繰り返してたらなんとかなるらしい・・・

 

それに加えて、

「コンテンツの価値が低い(複製されたコンテンツ)」

と出る・・・・・

 

いやまあそりゃ確かにそんなにいいブログじゃないかもしれませんけど、でもちょっと前までお宅様から広告出していただいていたんですけどね・・・・

と思いつつ、単なる手続き方法の紹介やアマゾンのアフィが多い記事は全部非表示にしました。

 

 

でも通らない・・・・

 

で、調べてみたら、

はてなProで独自ドメインにする前の記事のインデックスが残っていて、その記事のコピペと思われているのではないか?という考察があった・・・

xn--cck1aavtl7ge7p4ewdwej9176julvc.com

 

これを改善するためには、どの記事がコピペ扱いになっているかを特定して、その部分の登録インデックスをグーグルサーチコンソールで削除したりしないといけないらしい。。。

 

めんどくさい!!!!!

 

 

この作業をやる価値あるほどアドセンスで儲かっていたわけではないので、もうあきらめることにしました。

はてなProの会費も高いしお名前ドットコムの転送も毎月金かかるようになったし、これでよかったんだわ。。

 

それゆえ非表示にしていた記事も復活させました。ご不便をおかけした方がもしいらっしゃいましたら申し訳ありませんでした。

住民票の旧姓併記(旧氏併記)の注意点

住民票に旧姓が付記できるようになりましたね!

www.soumu.go.jp

 

これで、会社で旧姓を使っている場合や旧姓の銀行口座を持っている場合の本人証明がやりやすくなるそうです。将来的には旧姓で銀行口座が開設できたり、保険証を作れたりというのも可能になるとのこと。

これに伴い、旧姓のハンコでの印鑑登録も可能となるようです。

(あと、旧姓付記された住民票をもっていけば運転免許証にも旧姓付記ができるようになるという報道がありましたが、現状どうなっているかは警視庁のサイトには記載がなくまだ確認できていません。気になる方は直接警察にお問い合わせいただくといいかと・・)

 

いろいろ意見はあると思いますが、少しずつではありますが、旧姓で生活したい方の希望が実現しつつあるようで、私は良いことだと思いました。

 

この制度を活用したい人が有効に活用できるよう、注意点をまとめてみます!

 

1)住民票に旧姓を付記したら、印鑑証明書もマイナンバーカードも電子証明書も全部変わる

→そのため、手続きには以下のものが必要です。

・戸籍謄本(旧姓が書かれたもの~現在に至るまでのすべて)

・マイナンバーカードまたは電子証明書入りの区民カード(発行している場合のみ)

・電子証明書の暗証番号・パスワード

 

あと、現行の電子証明書は失効し、新しいものに更新しないといけません。

なので、確定申告を電子申告でやる場合などは注意が必要です。

 

2)電子証明書の変更は、市役所(区役所)でしかできない場合がある

→電子証明書以外の部分は市民(区民)事務所でもできるのですが、電子証明書の部分は本庁しかダメ、という市区町村があります。

その場合は、電子証明書を持っている方は市民事務所に行くと二度手間になりますので、市民事務所で手続きする場合は事前に確認されることをお勧めします。

 

3)住民票に旧姓を付記したら、それ以降発行する住民票はすべて旧姓付記のものになる

→現状、本籍地やマイナンバーのように記載を省略することはできないそうです。

必要のある時以外は旧姓を出したくない、という場合はちょっと考えたほうがいいかもしれません。

なお、付記が必要なくなった場合は旧姓の削除は可能です。

 

4)市区町村によっては、印鑑証明書のコンビニ交付がしばらくできない場合がある

→これは市区町村のシステムによりますので、お住いの市区町村にそれぞれ確認していただく必要があります。

 

たとえば佐賀県の神崎市は令和2年3月31日まではできないとHPに明記されています。(窓口交付は可能)

www.city.kanzaki.saga.jp

これはおそらく、旧姓併記の場合は印鑑証明書の形式が変更になることによるものですが、

気になって私も自分の住んでる市区町村に問い合わせてみましたら、そこはコンビニ交付も問題なくできる、とのことでした。

なので、印鑑証明書が近々必要になる場合は、手続き前にお住まいの市区町村のホームページを確認し、よくわからなければ問い合わせていただくことをお勧めします!

 

 

以上です。

 

私は婚姻時に自分の意志で今の姓を選んだので旧姓には特に思い入れはなく、また姓が変わってから税理士になったため、今後もたぶん旧姓を使う機会はないのですが、

手続きを失念している旧姓名義の資産がどこかに存在するかもしれないので、万一私が急死したときに遺族が手続きに困らないよう併記しといたほうがいいかな・・と思っているので、今度市役所に行く用事があったらついでにやってみようと思います。

 

 

厚生労働省のサイトで36協定とか就業規則が作れるようになっていた

新年あけましておめでとうございます!

仕事始めの日に届いた社労士会からのお知らせで知ったのですが、厚生労働省のサイトで就業規則などが作れるようになったらしい!

 

↓のサイトです。

www.startup-roudou.mhlw.go.jp

 

こんな感じで項目を埋めていくと、ガイドラインに基づいた就業規則がつくれるらしいです。

f:id:nekomage:20200107114732j:plain

 

これはすごい・・・・

自社のことは内部の人が一番よくわかっているはずなので、自分の会社の就業規則を外注せずに作れるようになるというのは素晴らしいことだと思います。

ただ、将来のリスク軽減のために十分な就業規則になるかどうかは不明なので、

そこから専門家の出番になるでしょうね。

ガイドラインに基づいた就業規則を一通り作ったうえで専門家に見せ、リスク軽減のための条項をつけ足したり文言を変更したりしてもらうとより良い就業規則になると思います。

 

形式的なことだけをやる専門家はますます淘汰されていきますね・・・がんばろう

 

 

そして、自社の現状の労働条件を入力すると診断もしてくれるそうです。

昔勤務していた会計事務所のことを思い出してやってみました・・

f:id:nekomage:20200107120455j:plain

思ったより良かった。

 

しかし次は最低でも70点ぐらいの職場に行きたいな・・・

 

 

このサイトはおすすめです!

短時間労働者の厚生年金加入拡大で見落とされていること・保険料の計算方法の見直しの必要性

今朝の日経新聞に、「厚生年金のパート適用、2段階で拡大」という記事がありました。

www.nikkei.com

 

私は、社会保険の適用拡大自体には賛成です。

(ここでは、厚生年金・協会けんぽや健康保険組合等の健康保険、いわゆる被用者保険について「社会保険」とよびます)

一家の大黒柱が勤務先で社会保険に入っていたら、年収130万円までの扶養家族は健康保険料が無料(配偶者の場合は年金も無料)なのに対し、

個人事業主で国民健康保険・国民年金であれば扶養家族の概念はなく、健康保険料は世帯全体の所得・人数等で計算、年金保険料もそれぞれに発生する、

というのは、個人レベルで見ると明らかに不平等であるからです。

*実際は、社会保険も事業主負担を合わせると国民健康保険より高くなることもあるのでそこでバランスをとっているという考えもあると思いますが、ここでは個人の負担感を問題にしています。

 

しかし、短時間労働者の厚生年金加入拡大は、今のままの制度だと問題が発生すると思います。

それは、自営業者で副業でパートをやっている人の健康保険料が大幅に安くなってしまい、高齢者の窓口負担や高額療養費にも影響が出る可能性があるという問題です。

(厚生年金加入は、協会けんぽ又は健康保険組合の健康保険加入とセットであるため)

今までなら、そういう人はレアケースなので無視しても影響なかったのだと思いますが、働き方が多様化し、気軽にいろんな仕事ができるようになった現在、検討が必要となっているのではないかと思います。

 

保険料を給与ベースではなく全体の所得ベースでかけるようにする検討も始めるべきなのではないでしょうか?

 

以下、具体的な数字を使って比較してみます。

 

●前提条件●

40歳未満の自営業者が、以下のような働き方をしているとします。

・自営業の所得が500万

・2年契約の派遣社員として週3日(所定労働時間24時間)、時給2,000円で勤務

・派遣会社の所属人数は300人

 

*40歳未満にしたのは介護保険料の影響を無視するため

*自営業所得と勤務日数のバランスが悪いような気がしますが、単価の高い仕事をイメージしていただければ・・・

 

この人の健康保険料について、現行制度と、加入拡大後とで比較してみます。

 

現行制度は↓でご参照ください。

www.nenkin.go.jp

●現行制度●

派遣社員としての収入は月8.8万円以上であり、所定労働時間は20時間を超えていますが、派遣会社の所属人数が300人であるため、常時501人以上の要件に該当しないので社会保険には加入しません。

よって国民健康保険に加入します。(業種や居住地によっては国民健康保険組合という

選択肢もありますがここでは割愛)

国民健康保険は、確定申告をしたすべての所得に対して保険料がかかります。

自営業所得500万円、派遣社員としての給料年収249万6千円(1年を52週として計算)

をもとに、試算した国民健康保険料は、

年額658,873円(月54,906円)となります。

 

高額療養費や、70歳以上の窓口負担割合についても所得をもとに判定されます。

 

↓こちらのサイトで、居住地を東京都中野区にして計算させていただきました。

www.5kuho.com

 

●適用拡大後●

記事では、適用拡大対象の企業の人数規模を2022年10月に101人以上にする、とありましたので、

この例の人は、そこから社会保険に加入することになります。

(国民健康保険は、社会保険に加入したら抜けることになってます)

社会保険の特徴は、「加入事業所の給与をもとに保険料を算定。あとの所得は無視」ということです。

(複数の勤務先で社会保険の加入対象になった場合は合算して保険料を計算します)

つまり、この人は自営業者所得のほうが多いにもかかわらず、健康保険料の計算上自営業者所得は無視され、派遣での給与だけをもとに保険料が計算されることになります。

 

社会保険料の計算は、入社時は契約上の定額給与、その後は原則4月~6月の給与をもとに計算されますが、ここでは、一年を通して月給がかわらないと仮定し、先ほど計算した年収を単純に12で割ったもので保険料を計算します。

249万6千円÷12=208,000円

これを、↓の協会けんぽ東京の保険料率の表(PDF注意)に当てはめて保険料を計算しますと、月額9,900円、年額118,800円となります。

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/h31/ippan4gatsu_2/h31040213tokyo.pdf

高額療養費や、70歳以上75歳未満の窓口負担割合についてもこの月額給与をもとに判定されます。

 

●まとめ●

この例に出した自営業者・副業で派遣社員をやっている人の健康保険料は

現在:年額658,873円(月54,906円)

拡大後:年額118,800円(月9,900円)

 

となり、所得は変わらないのに健康保険料は月額4万5千円も安くなるということになります。

 

これって問題ではないでしょうか・・・・・・・・・・

 

厚生労働省様におかれましては、

この問題についても併せて議論してもらえることを切に願います。

 

 

<余談>

上記の例の人の年金保険料については以下のようになります。

 

現在:月16,410円(国民年金・定額)

拡大後:月18,300円(厚生年金・月額給与をもとに計算)

 

少し上がりますが、その分将来の年金受給額も増えます。