労いと福利厚生費と給与課税と(雑感)

事業主の方が従業員の方を労う方法はいくつかあります。

 

1.給料を上げる

2.賞与や金一封を出す

3.社内環境をよくする

4.記念品をあげる

5.飲み会を開いたり、社員旅行を開催したり目に見える慰労をする

 

などなど・・・

すばらしいことです。

 

しかし、3,4,5など、お金をあげる以外の選択をした場合に事業主さん(や給与計算担当者や我々税理士)が頭を悩ませるのが「給与課税」の問題。

 

給与課税とは、お金をあげたわけじゃないのに給与と認定(「現物給与」と呼ばれる)され、本人に所得税が課税され、事業主に源泉徴収義務が発生するという状況の事を指します。

(モノによっては社会保険料労働保険料についても検討しなければいけませんがそれについては今回は割愛します)

役員の方の分以外は、給与課税になってもならなくても会社の経費として認められると言う点においては同じですので、会社的にはどっちになっても基本的に損得はありません。(役員の分は原則として損金不算入になりますが)

 

「せっかく労ってあげるのに所得税を取られたらかわいそうだから、そうならないような方法を考えたい」というハートフルなご相談を事前にしてくださる事業主さんもいれば、

「俺の考えた最強の慰労」を独断で実行して、その後給与担当者(又は税理士)に「これ給与課税しないといけませんね」といわれて「どうしてだ!なんとかしろ!!」と怒る方もいらっしゃる。

 

とにかく何かと悪者にされがちな給与課税なのですが、

もらう立場からすると、本当に労ってもらえるのであれば、給与課税されるかどうかよりも内容が大事なのではなかろうか・・・

 

 

給与課税されないためには色々要件があるので、その要件に縛られて楽しくないレクリエーションに行ったり欲しくもない物をもらったりするぐらいなら、

税金払うから好きなことやらせてくれよ!!!っていう気持ちになるのではないかと・・・

 

たとえば、社員旅行を給与課税にしないための要件というのが

国税庁タックスアンサーに記載されています。

 

No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行|源泉所得税|国税庁

 

ここには、

課税されないための条件として

(1)旅行の期間が4泊5日以内であること

(2)旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること。

とあり、あとハッキリと金額は書いていないのですが、

「少額不追求の趣旨を逸脱しない」つまり、会社負担分の金額があまり多いとダメ、となっています。

そして、要件を満たしたとしても、

欠席した人に金銭を支給したら全員が給与課税になってしまうとのこと。

 

つまり、

・基本的に事業所のみんなで行かないとダメ(行かなかった人には労いなし)

・あまり旅費が高くならないようにしないといけない

ということになるので、

 

会社のみんなで、部屋は複数人で相部屋、食事は当然大広間で全員で食べる・・

と言うような感じになりがちなわけですね。

 

ちなみに、労働法の面からいうと社員旅行の日程は出勤扱いにするか有給休暇扱いにするかはグレーゾーン、さらには土日に開催する会社もある・・・・

 

弁護士ドットコムの参考記事です↓

www.bengo4.com

 

確かに、家族的な会社ならこれもすごく良いねぎらいになり、みんなもますます仲良くなってHAPPYだと思いますが、

会社の飲み会すら嫌がられる現代において、これが本当に有効な慰労になるのだろうか・・・

 

だったら、極端な話、給与課税されてしまうけど

・旅行券を配布して有給消化日設定して家族や友達と自由に旅行に行ってもらう

もしくは

・社員旅行に行きたい人は行く、行きたくない人は金でもらう

っていう方が喜ばれるのではないだろうか・・・・

 

もちろん、社員旅行は社内のコミュニケーションのためで慰労はオマケと言う場合もある(と言うかそのケースが大半)だと思います。

社員旅行の有用性は否定しないし、もしそうだったら絶対給与課税にならないように設計する必要があると思います。(行きたくない人もいるから)

 

でも、そうではなく、本当に労いたいと言う気持ちで開催するのであれば、

給与課税のことばかり気にするのではなく、従業員の皆が本当に喜ぶ施策をできれば従業員の皆と一緒に考えられるといいなと思いました。

その中で、給与課税にならないうえに皆楽しめる策が思いついたら最高かなと。

 

長々と書きましたが、一番最悪なのは、

誰にも何も相談せずにオリジナリティあふれる福利厚生施策を行い、給与課税ももちろんせず、

数年後に税務調査が来て指摘され給与計算全部やり直しになって本人から追加で所得税を徴収する、

ということですので、

何か今までと違ったことをやろうと思うのであれば、

事前に給与計算担当者や顧問税理士に相談することをお勧めします!